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メガネのページ

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死の声 1:確信

俺はいつも通りに授業をすませ、いつも通りの仲間と、いつも通りの定食屋で昼飯を食っていた。みんな親友とは呼べないが、なかなかいいやつらである。下らないが。俺だってその下らないメンバーの一人なのだ。
俺のとなりに座るやつは池田修作。成績はそれなり。ものすごく影が薄い。一度会った瞬間顔を忘れそうになる。俺もこいつの顔を覚えるのに苦労した。その向かい、山田哲郎はひどい成績だ。でも何故か法学部に滑り込んでいる。オヤジが金持ちなので裏で色々あったとかいう噂もあるが真意は定かではない。最後に、そのとなりの竹下透。こいつは、とりあえず山田よりは頭がいいが、金もないため一浪。つまり俺たちより1つ下の学年。まあ大学ではこいつなりに頑張っている。
しかし、今の俺はそんなやつらとのルーティン、つまりはくだらない会話に集中出来ないでいた。今朝の夢が頭にこびりついて離れないのだ。血みどろの自分が頭の中で明滅していたそのとき、雑音が入る。
「・・・たのよ?」
「あん?」
「だからお前、こないだの合コンどうだったのよ?」
よく見たら、3人の間では俺が抜け駆けしていった先週の合コンの話題になっていた。先輩に「凄いかわいい子がいる」と言われ、ついて行ったがどうしようもないブスばっかりだったあの合コンだ。俺はあの時、3時間近くカラオケに監禁された。
山田が鼻の下を伸ばして答えを待っている。適当に受け流してやった。そして俺は待たあの夢のことを考える。今の俺は、あの夢を再び見ることを求めているのだと思う。あんな気味悪い夢に考える時間を浸食されるのはとても不愉快だが、頭のどこかがそれを快感だと感じているようだ。大丈夫か?俺の頭。
気づけばバイトの時間が迫っている。俺は3人に別れも告げないまま定食屋を後にした。

俺はバイトのビデオ屋でボーッとしていた。時給もいいし、たいしてキツくないのがこのバイトのいいところ。レジでまた夢のことを考えていた。もしかしたらあれは予知夢で、俺は近い将来に死ぬんじゃないだろうか?くだらない幻想だと知りつつも、俺の頭の中ではもうその説が有力となっていった。まだやり残したこともたくさんある。俺に残された時間はあとどれくらいなんだ?・・・・俺は本当にどうかしちまったな。でも、「自分は死ぬんだ」というイメージがどんどん強くなっていく。今日はバイトを早く切り上げてゆっく休もう。そうすればたぶんこの馬鹿げた考えも頭から離れていってくれるはずだ。


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